化学染料の基礎知識


布を染める場合、布の性質や技法にによって使用する染料が異なります
また、布には糊や不純物が付着しているので、糊抜き・精錬の作業が必要です

化学染料には、多くの種類があります
酸性染料・直接染料・反応性染料・建て染め染料(スレン染料)・アゾイック染料(ナフトール染料)・塩基性染料など
今回は酸性染料・反応性染料の染色方法に関して説明します


● 糊抜き・精錬     ・ 絹の糊抜きはほとんどの場合、湯通しだけで落ちますが、不純物が付いている場合には界面活性剤も加える

               ・ 木綿は湯通しだけでは落ちにくいものもある
                 布の重さの40〜50倍の温湯を準備
                 リッター2ccの界面活性剤(今回はエスポール)と5gのソーダ灰を加え、1時間加熱攪拌する

               ・ 麻の場合は木綿と同じだが、生地が折れやすいので、バットなどで平らに糊抜き、
攪拌しない

               ・ 羊毛の場合フェルト化しやすいので0.5ccの界面活性剤を加え、
60℃程度で精錬する

               ・ 上記の作業はすべて水洗してから染色


● 酸性染料        ここには含金性染料(イルガラン)も含めて説明(Aカラー・シルクファースト・デルクスなどメーカーによって名前が異なる)
  
acid dyes       酸性染料はタンパク繊維である絹・羊毛やナイロンに染着する
                しかし、セルローズ繊維である綿や麻には染着しない
                日光堅牢度・酸には強いが、洗濯には弱い

  
染色方法       ・ 捺染や直接筆描き、引き染めの場合は蒸すことによって色を定着させる
                 加える助剤は授業で説明

               ・ 浸染(しんせん)

                 浴比は布の重さの50倍が基準
                 染料は布の重さの0.01%〜5%濃度で使用
(実際には吸収率は2%が限界で濃くしたい時には一度乾燥させ繰り返す)
                 染料を20倍の湯で溶解する
                 布を入れ染液を加熱し、15分攪拌(この時の温度は60℃くらい)
                 いったん布を引き上げ、布の重さの1〜3%酢酸(染料濃度が濃い場合には蟻酸を使用する場合あり)を加え、布を戻し攪拌
                 さらに20分ほど攪拌染色後、充分に水洗し乾燥


● 反応性染料       反応性染料(Fカラー・Rカラー・リアック・ハンノール・レマゾール←メーカー名)には中温性と水で溶ける低温性染料がある
  
reactive dyes     木綿・麻などに適した染料
                 中温性と低温性染料は、どちらも日光堅牢度に優れている
                 低温性染料はローケツ染めなどに適している

  染色方法       ・ 低温性反応染料(Fカラー・リアック)は3%濃度のソーダ灰液で染料を溶き、直接筆で色差しや引き染め出来る
                 (夏場はそのまま5時間ほど放置、冬場は一晩おいたのち水洗・脱ロー等の作業)
                 堅牢度は高いが、発色力が弱いので、淡い色を使いたい場合に適している

               ・ 中温性反応染料(Rカラー・ハンノール)は強度のアルカリを使用するので、注意が必要です
                 堅牢度も色相も鮮明な染料
                 引き染めの場合は助剤を加え、蒸すことで色の定着も可能
                 強アルカリの
(アルカリフィックス・フィキサー)を刷毛で塗り定着も可能(詳しい説明は口頭で)
                 熱湯を流しながらアルカリを落とし、さらに水洗
                 
界面活性剤(今回はエスポール)と白場汚染防止剤
(今回はホワイトクリン)を加えた溶液で10分間ソーピング
                 水洗し乾燥


               ・ 浸染(しんせん)
                 堅牢度が高く、色相も鮮やかに仕上がる


                 
今回絞りにはRカラーを使用

                 布・糸は染色の前に30分

               
  浴比は布の重さの50倍が基準
                 複雑なので10リットルの染液と仮定して数値を算出

                 @ リッター50gの無水芒硝
(10×50=500g)を4倍の熱湯(500×4=2リットル)で溶く
                    染液10リットルから上の2リットルを引く
(10−2=8 残り8リットル)

                 A 染料を20倍の熱湯で溶く(例:10gを熱湯200ccで溶く)
                    @で残った染液8リットルから0.2リットルを引く
(8−0.2=7.8 残り7.8リットル)

                 B リッター20gのソーダ灰
10×20=200g)を4倍の熱湯(200×4=0.8リットル)で溶く
                    A残った染液7.8リットルから0.8リットルを引く(7.8−0.8=7 残り7リットル)


                 C 
Bで計算し、残った7リットルの水を寸胴に入れ、@とAも加えて攪拌、布を入れ10分間染色

                 D 一度布を取り出しBを加えて良く攪拌し、布を戻し加温する
                    60℃で加温を一定にし、20分染色

                 E 染色後、軽く水洗後
                    界面活性剤(今回はエスポール)と白場汚染防止剤(今回はホワイトクリン)を加えた溶液で10分間ソーピング
                    水洗し乾燥



● 化学染料の表記    化学染料には、これらの性質を詳しく記号で表記してあります
                 表示は、染料の種類を表す冠称、色語、性質、用途、色調などを表す記号の組み合わせで出来ています
                
冠称と色語の間に形容詞がはいる場合もある



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